IL EST TROP TARD 時は過ぎゆく ... L’essentiel est invisible pour les yeux.

< Photo story > Roppongi monochrome ・・・2

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それは去年の10月の日曜日のことだった

9時過ぎに莉絵がリビングのドアを開けると、カーテンが閉まった部屋はまだ薄暗かった

いつもなら誰よりも早く起きているはずの奈津子の姿が見えない

ママ、まだ寝てるのかな。。。まあ、たまにはゆっくり寝かせてあげなきゃね


普段ならコーヒーが湧いているはずなのにと、莉絵は自分でコーヒーを淹れようとキッチンに向かった

すると莉絵はそこで信じられない光景を見た

シンクの中には昨夜の夕食の食器がそのまま無造作に置かれ、お茶碗はカピカピになっていた

レンジの上にはひじきの煮物が入ったお鍋が蓋もしないままで置いてあった

莉絵は昨夜、深夜に帰宅してそのまま倒れこむように寝てしまったので奈津子と顔を合わせていなかった


「どんなに眠くても、疲れていても、ママはキッチンを片付けないで寝たことは一度もないわ ...」

莉絵が疲れて脱いだ服をそのままにして寝てしまうと、奈津子は良くそう言って小言を言っていた


莉絵は嫌な予感がして、急いで奈津子の寝室へ行きドアをノックした

「ママ、ママ、起きてる? 開けるよ」

莉絵が中に入ると、奈津子は窓の方を向いてベッドに腰かけていた

「大丈夫?具合でも悪いの?」

「あ、ごめんね。大丈夫、なんでもないの。今、何時?」

「9時すぎ。。。疲れてるなら休んでれば? 」

「大丈夫よ。ちょっと考え事してただけだから。それより朝ごはん、何か食べた?」

奈津子は寝室の窓を開けると、莉絵と一緒に部屋を出た


「さっき、コーヒー淹れようと思ったんだけど ... これから出かけるからご飯はいらない。

ねえ、どうせパパも拓也もいないし、ママも日曜日くらい、もっとのんびりすれば? 」

莉絵は奈津子の様子が何か変だと思いながらも、病気ではなさそうなのでほっとした


「そうね、今日はのんびりするつもりよ。」

奈津子はそう言ってお湯を沸かそうとキッチンに立った

あーあ、洗ってなかったんだ。お茶碗、カピカピ。。。。 まるで自分のようだと奈津子は思った

浸けておかないと、これは落ちないわね。。。

奈津子は他の食器を洗い終わると、そのお茶碗だけにちゃぽんとお湯を張った

何かひとつの動作をすると、その度にため息がもれなく出そうになるのを奈津子はグッと堪えた



休日だというのに、家の中は静かでがらんとしている

拓也が居た時は朝からずっとテレビをつけっぱなしだったので、奈津子も一緒に観たりしていたのだが

今ではニュースと情報番組以外は、ほとんど観なくなってしまった

拓也と一緒にバラエティ番組を観て笑っていると、夫の壮一郎はこれの何がおかしいんだと不機嫌になった

一緒に観れば楽しいのに、一緒に笑えばもっと拓也とも仲良くなれるのに、何度そう言おうと思ったか ...

拓也は私に似ている、それが夫にはまた不満で仕方ないことも奈津子は知っていた



娘の莉絵は、社会人になってから平日は仕事が忙しく休日もほとんど出かけていて家には居ない

弟の拓也は、結局一浪して北海道の大学に入学するため家を出た これは彼にとって正解だと思っている

そして夫の壮一郎は、相変わらずゴルフ場からゴルフ場へとゴルフバッグが放浪している週末で

奈津子は土日も一人で家に居ることが当たり前のようになっていた 

何も変わらない毎日、何も変えようとしない毎日、私の場合は後者だわ。。。



そういえば、昔、コーヒーを落とす時、気持ちが乱れていると味が変わると

どこかの喫茶店のマスターに言われたことがあったっけ。。。

奈津子は努めて平常心で淹れようとしたけれど、それでも今朝のコーヒーは

上手く落とせたかどうか自信がなかった



「コーヒー、入ったわよ」




つづく・・・

気持ちのいい朝、気持ちのいい季節、
なんか暗めの話で申し訳ありません。。。

pureさんの「一人じゃないのよモノクロ祭り」参加中


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by roseyrosey | 2017-04-28 06:00 | photo srory