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< Photo story > Daikanyama red . . . 2







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「ママ。」




「莉絵ちゃん、どうしたの?こんなところで。」


「どうしたの?って、ソレ、こっちのセリフだし。。。

 ママこそ、こんなところで何やってるの? もう、びっくりだよ。」


「え?  あ、ちょっと、お友達とね。


「代官山で? めずらしいね。いつもは、銀座とかが、多いのに。」



奈津子は、これ以上、莉絵がつっこんで来ないことを祈った。



莉絵は、広尾にある女子大に通っているため、この辺りは彼女のテリトリーだった。

学校はいわゆるエスカレーター式で、受験は小学校の時に一回しか経験していない。


本人は外部の大学に進みたかったのだが、夫はこの女子大の方が絶対に嫁の貰い手がいいと

娘の希望を頑として受け入れなかった。
莉絵をこの学校に入れることは夫のたっての希望だった。

夫の出た大学は、この女子大出の女性と結婚したがる人がたくさんいたらしい。


それに友達の大半もそのまま上に進むので、そのうち莉絵自身も もうそのことについて

口に出さなくなっていた。パパに何を言っても聞き入れてもらえないと諦めたのだろう。

 
受験シーズンのある日、奈津子は莉絵の部屋で 本当に行きたかった大学の願書が

折られてゴミ箱に捨てられているのを見つけた。それは夫の母校とは別のもう一方の大学だった。

ショックだった。娘を支えてやれず、夫に対して強く言えなかった自分自身を奈津子は責めた。

あの頃から、莉絵に対してどこか後ろめたい気持ちが灰色の塊となって

奈津子の心の一角に、ひっそり居座リ続けていた。



莉絵ちゃんは? ひとりなの?」


「見ての通り。さっきまで由依たちといっしょだったけど、

私、見たい本があるからって、もう、わかれた。

これから、蔦屋でマキノさんのサイン会あるんだ。ママも、いっしょに行く?」



蔦屋? どうして、今日、蔦屋?

奈津子が、どう、返事をしようか迷っていると、莉絵が何かを感じたのか



「ママは興味ないもんね。いいよ、いいよ。 その代わり、お腹空いてるから

ケーキご馳走してよ。夜ご飯は、お家で食べるけど、それまで持たないもん。」


と、言って、すぐ先にあるカフェに、さっさとひとりで入っていった。


奈津子は、仕方ない、事情を言って、遅れる旨を連絡しよう、と思った。


でも、このまま、莉絵といっしょにサイン会に行けば、それはそれでいいのかもしれない。

偶然にも、ここで莉絵に出会ったのは、何かしらの必然なのではないかしら。。。





< Photo story > Daikanyama red . . . 2_a0271251_18060196.jpg





莉絵が、ケーキを食べている間、奈津子は、なんてメールをしようとかと考えていた。



「ねえ、ママ。 きょう、ママに会ったことは、黙ってるほうがいいよね。」


「黙ってるって、誰に?」


「そんなの、パパに決まってるじゃん。」


「なんで? そんなの別にいいわよ。隠すことなんて何もないし。。。」


「そうなんだ。」


「そうよ。何、言ってるの? 莉絵ちゃん、へんなの。」


「そうかなあ。 へんなのは ママの方じゃないかなあって。。。

まあ、どっちでもいいけどね。 

ごちそうさま。じゃあ、私、もう行くね。」



そう言うと、莉絵はさっさと店から出ていってしまった。



奈津子は、その後姿を目で追った。知らない間に、すっかり女性になっている。

もう、可愛いだけの女の子ではない。きっと私の中の母親じゃない部分に

彼女はなにか鋭く反応したのに違いない。


奈津子はウインドウに映った自分の顔を見て、ふう、と、小さくため息をついた。

そのため息は、どちらかと言えば安堵のため息だった。



「もしもし。。奈津子です。

お待たせしてしまってすみません。

あの、ちょっと急用ができてしまって。。。。

ええ、本当にごめんなさい。では、失礼します。」



一気にそれだけ言うと、肩の力がストンと抜けた。



奈津子は それから 夫のLINEに、


『これから莉絵と、マキノさんのサイン会に行って来ます。』 と打った。


そして、めずらしくスタンプを2個 続けて送ってみた。





< Photo story > Daikanyama red . . . 2_a0271251_19441892.jpg





次に、莉絵のLINEにも


「ママも、今からサイン会に行くね、」と打ってから

莉絵のすきなサリーちゃんのスタンプを 送った。




あ、拓也にも、先にご飯食べててねって 送らなきゃ・・・。



10月の冷たい雨は、まだやまない。



奈津子は、温かそうな灯りのこぼれる蔦屋の店内へと 入っていった。




< とりあえず・・・ Fin  >



最後まで読んでくださってありがとうございます。
なんとなく相手の男性は?奈津子との関係は?と謎を残したままですが
オムニバス形式にするつもりなので、どこかでいろいろリンクしていく予定です。
あ、そうそう、あくまでもfictionですので、お間違いなく〜(笑)


<予告>
次回の短編は、<Roppongi blue > です。
いつになるかは、これから先のお楽しみ〜。






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Commented by tatuotoko0406 at 2014-10-24 21:56
んー
なんとなく安心しました。
しかしココに至るまでの物語も気になりますね(~_~;)
垣間見えるご主人の性格が原因かなあ?

ぜひ、回想シーンシリーズなどを!
Commented by yuusuii at 2014-10-24 22:00
すっかり、読み入ってしまいました。。
続きが気になります^^
Commented by nimuno-home at 2014-10-24 22:09
こんばんは♪
いぁー久しぶりに本を読んでいるようでしたよ^^
でもでも、奈津子と相手の男性のコトめっちゃ気になる(爆)
謎のほうが 妄想膨らむんだけどね^^ゞ
Roppongi blue 楽しみにしてまーす*^^*
nipopo*
Commented by oneman_avi at 2014-10-24 22:18
roseyさん、コンバンハー^^
いや~、私が安堵のため息ですよぉ・・・
うんうん、それでいい、それで・・なんて^^;
そーゆ時って、誰かに会うもんなんですね、
でも、娘とは・・・汗。
動揺を隠せないスタンプ2個。 なるほど~^^;

お写真とリンクして、とても楽しかったですぅ~
と、ゆーか、ちょっぴりスリル感♪味わいました^^
続編があるといいな・・・^^
   刺激をありがとーございます♪
Commented by tabi-to-ryokou at 2014-10-24 22:40
こんばんは~
奈津子の交際相手の男になったつもりで読んでました~(笑)
が、今日は電話を1回受けただけ。
もうちょっと出番が欲しかった(笑)

もし次に出番があったら、カサブランカのハンフリ^ボガードみたいに、
ニヒルでダンディーな男として、登場させて下さい(笑)
Commented by sotomitu at 2014-10-24 23:09
こんばんは!
昨日のお話をもう一度読んで、じっくり読ませていただきました!
面白かった〜!
roseさんは、この物語をすでに考えていてお写真を撮られるので
しょうか?それとも、お写真ありきの物語なのでしょうか??
凄く興味があるのですが・・・^^;
物語とお写真があまりにもマッチしていて素晴らしい〜♡♡
次の企画が楽しみです〜!!
Commented by ponponpopon at 2014-10-24 23:11
お写真を拝見に来たのに読みふけってしまいました、、。
ドキドキ、、
次作も楽しみにしてます♪
Commented by aitoyuuki32 at 2014-10-24 23:20
女の勘ってすごいのですね
母親の火遊びを感ずいてしまう。。。。

とっても面白かった
いっきのスクロールしながら読みました(^^)

相手がどんな男なのか気になってきますね。。
Commented by kei1583 at 2014-10-25 00:13
こんばんは。
写真のセンスだけでなく、文才もお持ちで、ますますただ者ではない感じがしてきましたよ。
短編ではもったいないくらいの面白さでした。

代官山も六本木も、田舎者の私には縁遠い所なので、
写真から感じられる都会の雰囲気と合わせて
ストーリーもとても楽しみです。
Commented by roseyrosey at 2014-10-25 13:50
<コメントをくださった皆様へ>

きょうもまとめてのお返事になりますこと、お許しください。
結果的にはこれでいいのだということにしたかったので
劇的な展開にはなりませんでしたが、日常生活でちょっとした
心の揺れのようなものを描いてみたかったので、これも有りかなと
筆者は思っております^^
普通の家族のひとりひとりの心の揺れがお互いの揺れに重なる時
果たしてその家族はどうなっていくのか。。。。
拙い文章&写真を見てくださってありがとうございました。
続き予定を変更して、アップしてみましたのでよろしければ
ご覧くださいませ。。。

roseyrosey
by roseyrosey | 2014-10-24 20:50 | srory | Comments(10)

L’essentiel est invisible pour les yeux.


by roseyrosey
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